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楽しみを見つけながら、生きていこう。オッド・ジョン編

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楽しみを見つけながら、生きていこう。オッド・ジョン編

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楽しみを見つけながら、生きていこう。オッド・ジョン編

「じゃあ、行く前に読みかたをぼくに教えていって」
ジョンの言葉にパックスは笑った。
「大仕事よ。アンがもっとよくなってから、教えてあげるわ」
何日かたつとパックスは、
昔からの方法でその仕事を始めた。
だがジョンはそんなやりかたに我慢できなくなって、
自分自身の方法を作りあげた。

かれは。パックスに指で字をたどりながら大きな声で読んでもらい、
自分はー語一語そのあとをたどっていったのだ。
パックスは、原始的なこの方法を笑わないではいられなかった。
だが、ジョンを相手にしたときは、それが成功したのだ。
かれは母親が口に出したすべての「声」の「形」を簡単に記憶した。
かれの、記憶する能力は絶対に確実なものらしかったのである。
そのうち、パックスが読み続けているのを止めもせずに、
かれは異った文字の
音を分析し始め、
間もなく英語の綴りの非論理性を呪いはじめた。

この授業が終ったとき、
語彙は限られていたものの、
ジョンはもう読めるようになっていた。
つぎのー週間のうちに、
かれは家の中にあった子供の本を全部と、
大人の本さえ数冊むさぽるように読んでしまった。
これらの本は、たとえ言葉はほとんど馴染みのあるものでも、
かれにとって何の意味もとれないものであったことはもちろんだった。
かれは間もなく、厭になってやめてしまった。

ある日かれは、姉が学校で使っている幾何学の本を取りあげたが、
五分ほどでそれを投げ出して言った。
「赤ん坊の本じやないか!」と。
それからあと、ジョンは自分に興味のあるものは
何でも読むことができるようになった。
しかし、本の虫になるような気配はまったくなかった。
かれの酷使された手が休息を必要とする時、
読書は動かないですむ良い仕事だったのだ。

というのは、かれは今や、
手で何かを作りあげるということに熟中する段階に入っており、
ボール紙、針金、木、粘土そのほか何でも手に入れられる材料を使って、
いろいろと天才的な工夫の模型を作っていた。
そして、絵を描くことにも、
多くの時間が費されていたのである。

やっと六歳になって、
ジヨンは関心を動くことにむけた。
この技術においてのかれは、
身体つきが保証している程度以上に遅れていた。
知的な建設的なものへの関心が、
そのほかのすべてのことを無視していたからである。

だが今やついにかれは、
ひとりで動くことの必要と、
この新しい技術を征服することの魅力を発見した。
そしていつものように、
かれの習得方法は独特なものであり、
その進歩は急速だった。
ジョンは這ったことなどいっぺんもなかったのに、
いきなり椅子に両手をおいて、
両方の足で交互に、
バランスを保ちながら、
まっすぐに立つことから始めた。

一時間こうしていただけで、
かれは疲れ果ててしまった。
そして生まれて初めて、
かれはまったくがっかりしてしまったのだ。
ふたりの数学者を、頭のわるい子供のようにあしらったかれが、
今は家族の中で最も活着な十歳の兄に対して、
新しく、あこがれに似た尊敬の念をいだいた。
一週間のあいだずっとジョンは、
トミーが歩くのや、走るのや、姉たちとふざけているのを
うやうやしく見つめていた。
動きのひとつひとつを、
いらいらしながらジヨンは注目していたのだ。

それにかれはせっせと、
バランスをとる練習もしたので、
母親の手をとりながら数歩あるけるようにさえなった。
しかしその週の終りに、
かれは神経衰弱のようになり、
それから何日も足を床につけなかった。
ジヨンは明らかな敗北感を味わいながら、
読書に、数学にさえ戻ったのだ。

充分に回復してから再び床に足をおいたとき、
ジョンは誰の助けも借りないで
部屋の隅から隅までまっすぐに歩き、
嬉しさしさのあまり、
ヒステリツクにわっと泣きだした。
それは、まったくジョンらしくない行為だったのである。
その技術は今や征服された。
練習によってかれの筋肉を強くすることが必要なだけだった。
だがジョンは、単に歩くことだけには満足しなかった。
かれは、その人生に新しい目標を掲げ、
かれ独特の決意をもって、
それを成しとげようとしたのだ。

最初かれは、その発育不良の身体のために、
ひどく不自由した。
かれの足は依然としてほとんど新生児のままであり、
ひどく短くて、曲がっていた。
だが、絶えず使っていたことと、
その負けじ魂のおかげか、
その両足はすぐに長く強くなっていったのである。
七歳の時のかれは、
兎のように走ることができたし、
猫のように木に登ることもできた。

身体つき全体としては、まだ四つぐらいに見えたが、
そのどこか筋肉質な点は、
八つか九つのいたずらっ子を思わせた。
そしてかれの顏は、
その形こそ子供っぽかったが、
表情は時としてまるで四十の男のようだった。
しかし、ひどく大きな目と、
ぴっしり密生した白い髪の毛のために、
かれは年齢の見当がつかず、
まるで人間でないような感じも与えたのである。

ジョンは今や、
びっくりするほど筋肉を制御できるようになっていた。
複雑な動ぎを勉強することは、
もう何もなかった。
かれの四肢は、それどころか個々の筋肉そのものが、
かれの望み通りに正確に動いたのだ。
このことはジョンが歩こうとしてからニカ月後、
泳ぐことを習ったとき、間違いなく示された。
かれはしばらくのあいだ、
姉さんのよく練習した足の動きを見つめながら
水中に立っていた。
そのあとかれは、水の底から足をあげて、
同じことをやったのだ。

何カ月ものあいだジヨンの全精力は、
さまざまな種類の肉体を使う行為で
ほかの子供たちと張りあうためと、
自分の意志を
かれらに押しつけるために費された。
みんなは最初、
ジョンの努力を喜んだ。
しかし卜ミーだけは例外だった。
かれはすでに弟に
追い越されつつあるということに気づいていたからだ。
同じ町の年上の子供たちは、もっと寛大だった。

というのは、かれらは最初からジョンの進歩ぶりに
トミーほど影響されていなかったからである。
だが次第にジョンは、
みんなの影を薄くさせるようになっていったのだ。
高価なボールが屋根の樋に入った時、
排水管をよじのぼって樋にそって這い、
そのボールを投げおろしたのは、
もちろんひょろひょろした四歳ぐらいに見えるジョンだった。
それからかれはただ面白がるためだけに、
タイルばりの斜面をよじ登ってゆき、
屋根のてっぺんにまたがった。
引用元
オッド・ジョン

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